JALのステータスマッチ検討が映す上級会員争奪戦の行方
ニュースの概要
日本航空(JAL)が、他社の上級会員を自社の会員へ迎え入れる「ステータスマッチ」を導入する可能性を否定せず、取り込み策を調べていることが報じられた。ステータスマッチとは、他の航空会社で得た上級会員の資格に応じて、自社でも同等の待遇を与える仕組みである。海外の航空会社では以前から広く使われてきたが、日本の大手では目立った例が少ない。今回の動きは、搭乗実績を積み上げた利用者を競合から奪うための一手として、また訪日・出張需要の回復後に高まる会員獲得競争への備えとして注目される。具体的な条件や開始時期はまだ示されていない。
引用元: JAL、”ステータスマッチ”導入の可能性否定せず 他社上級会員の取り込み策を調査(TRAICY(トライシー))
分析・見解
上級会員は少数でも売上への貢献が大きい
航空会社の収益は、全利用者に均等に支えられているわけではない。頻繁に飛ぶ上級会員は、人数こそ全体の数%でも、座席売上の中で大きな割合を占めるといわれる。しかも彼らは運賃の高い直前予約や上位クラスを選びやすい。つまり一人当たりの価値が桁違いに高い客層である。
この客層を競合から迎え入れられるなら、広告を打つよりずっと効率がよい。ステータスマッチは、その入口を一気に広げる仕組みである。
海外で定着した手法を、日本でどう調整するか
米国や欧州、アジアの航空会社では、ステータスマッチや、期間限定で資格を試せる「チャレンジ」が長く使われてきた。たとえば他社の最上級会員に、数か月だけ同等の待遇を与え、その間に一定の搭乗実績を積めば資格を維持できる、といった設計である。
日本の大手は、国内線の比率が高く、会員の入れ替わりも少ない市場に支えられてきた。そのため積極的に導入する必要が小さかった面がある。だが国際線の比重が増すほど、海外勢との競争を避けられなくなる。日本発着の便で他社の上級会員を引き込む手段として、検討の価値は高まっている。
待遇の希薄化という副作用をどう抑えるか
上級会員を増やしすぎると、ラウンジが混み合い、座席のアップグレードも当たりにくくなる。既存の会員は不満を抱き、かえって離反を招く恐れがある。
だから実際の制度は、対象を限る形になりやすい。対象の航空会社を絞る、資格の期間を短くする、一定の搭乗実績を求める、といった条件である。上級会員の「価値の希少さ」を守りながら新規を取る。この綱渡りこそが設計の核心になる。
提携関係と価格競争の外で、会員制度が勝負所になる
運賃は比較サイトで簡単に並べられ、差がつきにくい。一方で、会員制度の待遇は乗り換えにくさを生む。だからこそ、航空各社は運賃以外の「囲い込み」に力を入れる。
ステータスマッチの検討は、運賃競争から会員体験の競争へ軸が移りつつあることの表れと見ることができる。
ビジネスへの影響
出張が多い企業は、社員の資格を会社の交渉材料にできる
社員が他社で上級会員の資格を持っている場合、ステータスマッチが始まれば、その資格を別の航空会社で活かせる可能性が出てくる。法人の出張管理では、特定の航空会社に利用を集めて割引や優遇を引き出す契約が一般的である。社員の資格が移せるなら、契約先を切り替える際の心理的な負担が下がり、交渉の選択肢が増える。
出張規程を見直す機会でもある。どの路線で、どの航空会社を使っているかを集計しておけば、条件が公表された時にすぐ判断できる。
旅行会社や関連サービスは、制度の細部を早めに把握したい
旅行会社、出張手配サービス、ポイント関連の事業者にとって、制度の対象や期間は商品設計に直結する。条件が厳しければ限定的な話題にとどまり、緩ければ乗り換えの動きが広がる。
今は具体的な条件が出ていない段階である。過度に期待して先走るより、公式発表を待ちつつ、顧客から問い合わせが来た時の説明資料を準備しておくのが現実的である。
個人の利用者は、実績の証明を残しておく
自分に上級会員の資格がある人は、利用実績や会員資格を示せる画面や書類を保存しておくと、制度開始時に手続きが早い。ただし、乗り換えるかどうかは、路線網や提携先、家族の利用状況まで含めて判断すべきである。待遇の名称だけで決めると、後で使い勝手の差に気づくことになる。